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2009年 04月 14日

やがちゃんのXX KLUV 2

やがちゃんのXX KLUV2とはYOUNGASのすこぶる団地好きなほう・シノダが完全妄想で理想の逢い引きをしてみるコーナーです。

第4回<ペ・ドゥナ>

「韓国から来ました」

彼女は無表情のままそう挨拶して小さくお辞儀した。
ウチのコンビニのトレードマークの青と緑と白の制服がまだ新しく眩しい。バッジには「ペ」と書かれている。

「カトチャン、わかんないことはコイツに聞いてね!じゃあ後頼むわ!」
ガサツが服を着てるようなウチの店長がペさんだからこう呼んでいるという残念なセンスの持ち主であるということは彼女にもいずれ伝わるだろう。

一通り仕事の説明を終えると深夜の静けさが深みを増す3時ちょうどだった。

「日本はどう?」
「交換留学生で高校の時一度来たよ。楽しいです」
「日本好きなの?」
「うん」
「日本語上手だね?」
「ふふふふ」
「おかしい?」
「日本の話ばっかりだから」

笑顔の彼女はドキッとするほど可愛らしかった。


1ヶ月が過ぎてすっかり意気投合した僕らは映画を見に行くために駅前で待ち合わせた。
制服姿とバイトの行き帰りのいつものパーカーとジーンズしか知らなかった僕は驚いた。春色のキレイなワンピース。スカートが風に揺れていた。髪も下ろしていて印象がまるで違う。かわいいというよりキレイ。

「キレイだね」

ドゥナが笑顔でつねってくる。照れているのだ。

彼女が見たいと言っていた映画はホロコーストを扱った重いテーマでおよそデートには合わなかったけど胸に迫るモノはあって映画館を出た僕らはすっかりぐったりしていた。

「ドゥナご飯食べる?」

ドゥナは顔を横に振って「食べたくない」とつぶやいた。
確かに食欲はわいてこない。静かなカフェに入ることにして向かいあって腰かけた瞬間、倦怠期のカップルみたいなため息が二人同時に出て僕らは吹き出してしまった。

それから何度かデートして約1年付き合った。
建築を学びに来ていたドゥナは母親の具合が悪くなったからとマジメに通っていた学校を辞めて帰国することにしたと言った。
遠くても連絡を取り合えばいいし時々会いに行くと説得したけど迷惑をかけたくないとドゥナは別れると言って聞かず二人は黙って手をふり合って別れた。


それから8ヶ月。
相変わらずのコンビニバイト生活に嫌気が差していた夏の午後。休憩中にコンビニの裏にしゃがみタバコを吸っていると着信が鳴った。ドゥナだった。

「久しぶり。日本に戻ることになったよ」
「え?」
「ママ具合良くなったから」

電話口の声が真後ろから聞こえてくる。
ドゥナが携帯を頬に当てたままニコッと微笑み僕は呆然と立ち上がった。

※この日記に関するお問い合わせ、質問、意見などは一切受け付けておりません。
また、この日記を読んで「引きの画でどれだけ強く見せれるかだよね。その点はクロサワに顕著だよね?もちろん清のほうね」とか言っちゃう邦画好き気取りめが!などの苦情もお断りいたします。

やがちゃんのXX KLUV 2_f0182863_1914686.jpg

by youngas | 2009-04-14 22:59 | やがちゃんのXX KLUV2


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