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2010年 06月 22日

やがちゃんのYMO(Youngas Movie's Opinion) vol.6

やがちゃんのYMOとはYOUNGASシノダが映画について勝手かつダラダラと語り散らかすコーナーです。(大いにネタバレを含みます。鑑賞後に読まれることをおすすめいたします)
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vol.6『告白』

「何でわざわざ劇場に足を運んで、お金を払ってまでこんな気持ちにさせられなければならないのか?」と怒りをあらわにしている感想の書かれたブログがあった。
女教師が教え子に実の子供を殺され復讐をするという大まかなあらすじを聞いただけでディープかつ陰湿な内容であることは想像出来るし勝手に見に行っといてそりゃないよあんたという思いはあるが全くわからないでもない。
それぐらい負の連鎖が渦巻く最後まで誰も得しない話なのだ。

『イングロリアス・バスターズ』がユダヤ人たちに捧げられたように『告白』は少年犯罪の被害者遺族に捧げられた映画と言っていい。
松たか子演じる教師森口は犯人の少年Aが愛娘を殺した理由が「自分の母親に認められたかったから」と知ってその帰り道に倒れ込むように号泣するのだが(台詞だらけでかなり饒舌な映画なのだがその涙のワケは語られない)そのワンシーン以外は復讐の鬼と化しマシーンのように大オチとなる完全なる復讐に向かって突き進んで行く。
被害者遺族の感情を考えれば復讐したい、自ら手を下したいと思うのは当然である。
しかしそれを実際に成し遂げる姿を目の当たりにした我々観客は暗く深く重い何かを抱えて劇場を後にすることになる。そこにはざまみろまみれの憎悪もあるしでもそれで娘は帰らないという絶望もある。復讐が済んでしまったら何を生きがいにすればいいのかという考え方もある。実際、被害者遺族が犯人の死刑が執行され「あれほど望んでいたのに今は炎が消えてしまったみたいに脱力感に包まれている」と答えるインタビューを見たことがある。
身内が殺されてしまった事実を受け入れることが出来ず復讐という感情に思いを委ね、いつしかそれだけが生きがいとなっているというアイロニー。目の前には二度と体温を取り戻すことのない娘が笑う遺影だけがあるというリアリティ。
つまりは復讐に寄る永遠のカタルシスなどこの世にはないということなのだろう。
それを冷静に切り取って見せて巧みにつなぎ合わせエンターテインメントまで昇華させた中島哲也監督はやはりただものではない。

そして間違いなく小説より映画の完成度の方が高い作品だった。小説は森口の告白による導入の衝撃に対しズルズルと引き摺られていくような後半のゆるさがハンパじゃない印象があった。


とりあえず最近の若い奴らがどれだけずる賢く純粋さを欠いているかが笑えるほど描かれているからR指定なんか無くして全国の中学校で上映してやればいい。

なーんてね。


★★★★(4ツ星)

YOUNGAS シノダ
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by youngas | 2010-06-22 19:30 | やんがすちゃんのYMO
2010年 06月 17日

劇画やんが道

第4話「明日に向かって走れ」

「夜蛾さんひさしぶりですっ」
凪子の必殺スマイルにボディをやられながらも必死に冷静さを保とうとする夜蛾。
「久しぶりだったねぇ。はは。バイト始めたんだ。ふーん。制服以外のうしおちゃんもいいもんだねぇ。ははは。風呂上がりなのかな。ははははは」
まくしたてるように話す夜蛾の顔は明らかに引きつっていた。
「あ。今度店に来てくださいよぉ!一杯ぐらいなら内緒でサービスしますよ!」
「う…うん。ははははは」


凪子が帰り客のいない店内。雑誌を片付ける無野。
レジで突っ伏す夜蛾。
「無野ちゃん。うしおちゃんは相変わらずかわいかった。しかしあんなロン毛に毎晩あんなことこんなことやられてんだぜ。世界はどうしてこう不平等に回り続けるのかねぇ」
「奪っちゃえば?」
「うば、うば、うば、うば、奪っちゃうって何を?」
「潮さん」
「奪っちゃえるんなら奪っちゃいたいけどもどうすんだよ?何もないよ俺」
「そんなん自分で考えろ!ったく!」
無野は機嫌悪そうに倉庫へ入っていった。
「何っ!?無野ちゃん?怒った?え?怒ったの?ねぇ!!」


翌日。

薄汚れた部屋の真ん中で夜蛾が真剣な顔つきで何か書いている。
「うしおちゃんの好きなもの
・アクエリアス(よく買うから)
・ガリガリ君(よく買うから。主にソーダ)
・嵐(前にブスのカオルコとニノいいよねと話していた) 
・やりすぎコージー(野生爆弾が面白いですよねと言っていた。意外とお笑いがわかっている)」

「はぁ〜。よく考えたら俺これぐらいしかあの娘のこと知らねんだな」

ため息をついてベッドに横たわると夕べの無野の顔が目の前に現れる。
「奪っちゃえば?」
その言葉が幻聴のように頭を駆け巡り夜蛾はキツく目を閉じた。



「おはよー」
結局眠れず無精ヒゲかつかつてないぐらいのローテンションで夜蛾がヘルマートの倉庫の扉を開けると手を組み苛立ちを露わにするカオルコと無野の後ろ姿が目に入った。
「それマジなの?」
「マジだと思う。あいつは居酒屋のバイトでやったとか言ってっけど。絶対ウソ。わかりやすいもんあの子」
「お二人してどしたの?」
とぼけた調子で夜蛾が聞く。
無野が真面目な口調で答えた。
「あの淫行教師に暴力ふるわれてるみたいよ潮さん」
「あーしが言ったって言わないでねマジで。でも百瀬かなりの暴力教師だから絶対そうだと思う」
「今うしおちゃんはどうなってんの?大丈夫なの?」
心配そうな夜蛾に無野がため息まじりに答える。
「足引きずってんだって。松葉杖ついてるみたいよ」
夜蛾がいてもたってもいられない様子で倉庫からダッシュで出て行く。
「夜蛾さんっ!!ちょっとバイト!!」
カオルコの声は届かなかった。
無野がつぶやいた。
「俺代わりに出るから。あいつ男になれるかもしれないから」



一心不乱に街を走る夜蛾。
汗とか鼻水とか色んな液が分泌している。

「うしおちゃんっっ!!うしおちゃんっっ!!うしおちゃんっっ!!!!」

商店街は気の抜けたBGMに包まれ夜蛾が必死で走る姿を塀の上の猫と青すぎる空だけが見下ろしていた。

つづく
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by youngas | 2010-06-17 15:48