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2010年 06月 17日

劇画やんが道

第4話「明日に向かって走れ」

「夜蛾さんひさしぶりですっ」
凪子の必殺スマイルにボディをやられながらも必死に冷静さを保とうとする夜蛾。
「久しぶりだったねぇ。はは。バイト始めたんだ。ふーん。制服以外のうしおちゃんもいいもんだねぇ。ははは。風呂上がりなのかな。ははははは」
まくしたてるように話す夜蛾の顔は明らかに引きつっていた。
「あ。今度店に来てくださいよぉ!一杯ぐらいなら内緒でサービスしますよ!」
「う…うん。ははははは」


凪子が帰り客のいない店内。雑誌を片付ける無野。
レジで突っ伏す夜蛾。
「無野ちゃん。うしおちゃんは相変わらずかわいかった。しかしあんなロン毛に毎晩あんなことこんなことやられてんだぜ。世界はどうしてこう不平等に回り続けるのかねぇ」
「奪っちゃえば?」
「うば、うば、うば、うば、奪っちゃうって何を?」
「潮さん」
「奪っちゃえるんなら奪っちゃいたいけどもどうすんだよ?何もないよ俺」
「そんなん自分で考えろ!ったく!」
無野は機嫌悪そうに倉庫へ入っていった。
「何っ!?無野ちゃん?怒った?え?怒ったの?ねぇ!!」


翌日。

薄汚れた部屋の真ん中で夜蛾が真剣な顔つきで何か書いている。
「うしおちゃんの好きなもの
・アクエリアス(よく買うから)
・ガリガリ君(よく買うから。主にソーダ)
・嵐(前にブスのカオルコとニノいいよねと話していた) 
・やりすぎコージー(野生爆弾が面白いですよねと言っていた。意外とお笑いがわかっている)」

「はぁ〜。よく考えたら俺これぐらいしかあの娘のこと知らねんだな」

ため息をついてベッドに横たわると夕べの無野の顔が目の前に現れる。
「奪っちゃえば?」
その言葉が幻聴のように頭を駆け巡り夜蛾はキツく目を閉じた。



「おはよー」
結局眠れず無精ヒゲかつかつてないぐらいのローテンションで夜蛾がヘルマートの倉庫の扉を開けると手を組み苛立ちを露わにするカオルコと無野の後ろ姿が目に入った。
「それマジなの?」
「マジだと思う。あいつは居酒屋のバイトでやったとか言ってっけど。絶対ウソ。わかりやすいもんあの子」
「お二人してどしたの?」
とぼけた調子で夜蛾が聞く。
無野が真面目な口調で答えた。
「あの淫行教師に暴力ふるわれてるみたいよ潮さん」
「あーしが言ったって言わないでねマジで。でも百瀬かなりの暴力教師だから絶対そうだと思う」
「今うしおちゃんはどうなってんの?大丈夫なの?」
心配そうな夜蛾に無野がため息まじりに答える。
「足引きずってんだって。松葉杖ついてるみたいよ」
夜蛾がいてもたってもいられない様子で倉庫からダッシュで出て行く。
「夜蛾さんっ!!ちょっとバイト!!」
カオルコの声は届かなかった。
無野がつぶやいた。
「俺代わりに出るから。あいつ男になれるかもしれないから」



一心不乱に街を走る夜蛾。
汗とか鼻水とか色んな液が分泌している。

「うしおちゃんっっ!!うしおちゃんっっ!!うしおちゃんっっ!!!!」

商店街は気の抜けたBGMに包まれ夜蛾が必死で走る姿を塀の上の猫と青すぎる空だけが見下ろしていた。

つづく

by youngas | 2010-06-17 15:48


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